猫とグルーミング
猫を観察していると、体中をくまなく舐めて毛づくろいをする姿を頻繁に見かけます。
ヒマさえあればしている猫の毛づくろい「グルーミング」。
猫は1日のうち、およそ3分の2を寝て過ごすと言われていますが、残り3分の1のわずかな活動時間のうちなんと10%~30%を、グルーミングに費やしていると言われています。なぜこのように、多くの時間を費やしてグルーミングを行うのでしょうか?
なぜ身体を舐めるのか?
もともと外で狩りをして生活していた猫は、獲物や敵に気づかれないために被毛をなめて自分の臭いを消していました。また、捕食動物の血などで汚れた身体も、あのザラザラとした舌を使って毛づくろいをすることで清潔に保っていました。
このように、猫のグルーミングはご先祖さまから受け継いだ名残で「狩猟本能」や「防衛本能」からくる本能的な行動のひとつと言われています。そして飼い猫になり、フードを与えられるようになった現在も、このグルーミングは猫にとって様々な役割を果たしています。
なぜ身体を舐めるのか?
体を清潔に保つ
猫の舌の表面には「糸状乳頭」と呼ばれる突起が無数にあります。この「ザラザラ」が抜け毛や自分の体毛についた細かな汚れやホコリをしっかり絡めとり、毛玉や皮膚炎を予防しています。
また、猫の唾液には殺菌作用が含まれているため、身体を清潔に保ちます。
リラックス効果
猫も人間と同様にストレスを感じています。
例えば大きな物音や飼い主に怒られた時など、緊張や不安・驚きを感じた時にグルーミングすることで気持ちを落ち着かせようとします。
猫は赤ちゃんの頃、母猫に毛づくろいをしてもらいます。母猫のザラザラした舌で舐めてもらうことでマッサージ効果もあり、リラックスし安心感を得ていました。
成長してもその感覚は覚えていて、ストレスを感じたり嫌なことがあった時には自分で体を舐めて、リラックスしようとしているのです。
栄養(ビタミンD)の補給
太陽の光を浴びると、猫の身体の表面にはビタミンDが作られます。骨や歯の発育に影響を及ぼすビタミンDは猫の健康にとって欠かせない栄養素のひとつ。
グルーミングすることで、健康維持のために大切な栄養素も摂取しています。
体温調整を行うため
汗腺がほとんどない猫は、人と違い汗をあまりかきません。そのため、暑い夏場などは舐めることで唾液を気化させ体温を下げているのです。
また冷却効果だけではなく、寒い冬はグルーミングをすることで体毛の間に空気の層を作り、保温効果を生み出すことで体温を逃がさないようにしています。
コミュニケーション
猫は自分の身体だけでなく、猫同士、または飼い主さんの手や顔などをペロペロと舐めることがあります。飼い猫だけではなく、外で生きている野良猫でもその光景を見かけることがあります。
これは、猫が仲間と認めた相手にしか行わない「愛情表現」で、仲が良く信頼関係が結ばれた同士だけが行う親和行動の1つです。
単独で行うグルーミングを「セルフグルーミング」と呼ぶのに対し、他者に行うグルーミングは「アログルーミング」といい、大切なコミュニケーション方法の1つです。
愛情を深める
グルーミング
グルーミングは猫にとって、身体的にも精神的にも非常に重要な役割を果たしています。また、私たち人間と猫との信頼関係を築く上で重要なコミュニケーション手段でもあります。
私達が猫を舐めてあげることはできませんが、猫になったつもりでグルーミングをしてみてください。頭や首の後ろ・耳や顎など、普段猫が自分ではグルーミングできない場所探しながら…
このような日々のグルーミングが、私たち人間と猫との愛情・信頼関係はより一層深めてくれることでしょう。